2017-10

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「来た、見た、勝った」・・・じゃなくて、「消えた、出直した、漏れた」

   
 社会保険庁時代には「消えた年金」問題が発生したが、今度は日本年金機構で何と呼ぶべきか「漏れた年金情報」問題が発生した。   
   
 扱う情報の大切さについての認識、それに相応しいセキュリティ対応や慎重さ、問題発生後の迅速で的確な対応など求められたわけであるが、さて、実態をどのように評価すべきか。「あのような攻撃を受ければ、これはもう仕方ないさ」と同情すべきであるのか・・・分からない。   
   
   
 普通の企業・職場の場合、仕事が早めに済んだときでも終業時刻になるまでは席・持ち場などにいるものである(時には同僚と談笑することもあるが、ま、それも許されよう)・・・そして、終業時刻になってから席を離れ、タイムカードが導入されている場合であればそれに時刻を印字する等々のことがされている。   
 が、しかし、社会保険庁であったか、どこかの社会保険事務所であったか忘れたが、終業時刻前からタイムカード印字マシンの前に職員の列が出来ているということも見受けられたようである(そして、終業時刻を迎えたところでタイムカードの時刻の印字をするわけである)・・・「消えた年金」問題のときに視察した国会議員がこれを目にして呆れたということを、新聞記事か何かで目にした記憶がある。   
 「上のようなことから窺える執務意識・モラールが、日本年金機構とその関係組織にもなお残っていたりせぬか、いや、うーん、常に真剣さを持って仕事に当たっているのか」という疑念を、筆者はずっと持ち続けている。「今や、職員の意識はガラッと変わっているよ」との反論もありえようが、そうだとしても、ともかく今回の事件は起きた。   
   
   
 さて、今回の件にからんでは今後に、国民ひとりひとりを巻き込みうる特殊詐欺事件が生じやせぬかと指摘する声がある。で、今回の件に関連して日本年金機構から国民に電話で連絡することはないから不審な電話には注意せよ、ということになっている。この注意喚起の仕方・内容は十分であろうか? もっと広範なケースを念頭に置いて注意喚起すべきではないのか・・・「今回の件に関しては多様な詐欺事件が想定されます、しかし、まずもって、金銭の支払に結びつくような話に乗ってはいけないということを肝に銘じてください」みたく。   
   
 詐欺事件に詳しい人が、詐欺事件/詐欺電話として想定されるパターンを述べて注意を促しているが、筆者思うに、それら想定パターンに尽きるだろうか(尤も、すべての想定パターンを読んだり聞いたりしているわけではないが)。   
   
   
 2015年7月、あなたのもとに次のような電話が掛かって来るかも知れない・・・この例において、電話の主は、自分たちが日本年金機構や年金事務所の職員であるとは名乗らない。さて、誰ひとりとしてだまされることはない、と断言できようか:   
   
   
「もしもし・・・田中さんのお宅ですか? ご主人の伝八郎様でいらっしゃいますか? こちらは○○ローン・サービスの奥村と申します。   
   
 先週はお疲れ様でした。 え? 先週の2日に資金のご用立てをさせていただいた○○ローン・サービスです。わたくしどもをお選びいただき、ありがとうございました。   
   
 それで、緊急に確認いたしたいことがございましてですね・・・田中様、資金の使途はクリーニング店の運転資金であると申告なさいましたが、昨日、お申し出のあった店舗住所であります緑町1-2-○○の現況確認に参ったのですが、どうしてもお店が見当たりません。   
   
 それで、本人確認書類として提示いただきました田中様の年金手帳(または年金証書)のコピーを再度詳細にチェックさせていただきましたところ、これが偽造されたものであることが判明いたしました。日本年金機構に確認いたしましたところ、田中様の場合、基礎年金番号その他の情報が外部に流出していますよね、間違いございませんか? それをもとに年金手帳/年金証書が偽造されたものと推測されます。   
   
 あ、いえ、わたくしどもは、日本年金機構から田中様のもとに流出事件に関する郵便がちゃんと届いているかどうかまで感知しません、ともかく、わたくしどもが田中様にご融資いたしたものについて、お約束どおりに8月から分割返済を開始していただきさえすればそれでよろしいわけです。 え? 300万円をお渡ししましたよね。これは元本ですから、あともちろん利息を乗せて返済いただくことになりますけれども。   
   
 いえ、お貸ししたものはきちんと返済していただかなくては。場合によっては田中様所有の不動産などについても差し押さえすることになりかねんませんし、そうすると家を引き払ってどこかへ移り住んでいただくことにもなりましょうし、ちゃんとしてください、お願いします。   
   
 田中様はそもそも、ご自身の年金情報が日本年金機構から流出したにもかかわらず、わたくしどもなど金融機関・貸金業者に注意を促すための届出を行なっていないご様子で・・・え? 各人が法務局、これは登記所とも呼ばれますが、もしそこに届出なさっていたならば、その電子データをわたくしどもは融資のときにチェックすることが義務づけられていて当然確認しますから問題は発生しない筈なのです。田中様の側でも、年金手帳や年金証書が偽造されたものであるから借金なり連帯保証なりといった法律行為が無効であると主張できるわけですが、田中様はそれを怠っていたわけですよね。さきほど再確認いたしましたところ、昨日になってもまだそういう届出を済ませておいでではありませんね、間違いありませんか?   
   
 特例法をご存知ないのですか? 特例法と言いますのは正しくは「日本年金機構からの年金情報流出と本人確認手続に関する特例法」というものですが、これに基づいて、先ほど申し上げたような届出を田中様はしておかなくてはいけないわけです。    
   
 困りましたね。そう致しましたら、お手数ではありますが、この特例法に付則がありますから、それにもとづく手続きを進めていただけますか? わたくしどもと田中様と、お互いのためになることですから、よろしくお願いします。   
   
 えっと、本当にご存知ないのですか?    
 先ほどの特例法には付則というものがあります。一種の救済措置になります。田中様が返済をまぬがれるための手続きになります。   
   
 では、概略をご案内します。わたくしどもがこうして田中様にご連絡を差し上げてから3日以内に貸し金の元本と同額、つまり田中様の場合ですと300万円ですが、これを法務局、さきほど申しましたとおりに登記所とも呼ばれますが、そこに供託していただく、つまり預けていただくと、少なくとも、まず田中様のお借り入れについて利息が発生しない扱いになります。そして、あとこれは1か月とか2か月とか、そんなに慌てずともよろしいのですが、所定の書類に、お手もとにあるホンモノの年金手帳や年金証書を添えて簡易裁判所に申し立てを行なっていただきます。すると裁判所から決定・命令が出ます、この手続きは形式的なものですからまず間違いなく大丈夫です、それで田中様は返済を完全にまぬがれます。わたくしどもが田中様に返済を迫ることは禁止されますし、また、たとえば田中様の不動産などを差し押さえることも禁止されます。法務局に預けていただいたお金につきましては田中様のもとに戻されます。わたくしどもには、貸したお金と同額が国から給付されることになります。日本年金機構という機関の不祥事ですから、国がそういう特例法を施行しているわけです。わたくしどもとしては本当は利息も欲しいところですが、残念ながらこれはやむをえないところでして。   
   
 いま申しましたように裁判所のほうの手続きは急がなくてよいのですが、法務局への供託、つまり300万円を預ける手続きは今日を含めて3日以内、つまり、あさってまでに済ませていただく必要があります。時間的には少し苦しいのですが、きちんとしていただく必要があります。   
 この手続き、わたくしどもが田中様を代理して行なうことは認められていません。わたくしどもと田中様とがグルになって不正な手続きをすることを防止するため、そういう代理は禁止されているのです。   
 それでですね、田中様には弁護士または司法書士をご紹介させていただきますので、そちらを通じて速やかに手続きを進めていただきたいのです。よろしいですか? 遅れると田中様は返済をしなくてはならなくなりますし、そして今回の融資条件では利息もわりと大きくなりますからくれぐれもご注意ください。   
 それでは、のちほど、弁護士さんか司法書士さんから連絡を差し上げることになりますので・・・あっ、ご紹介できる弁護士さんのほうがもしかすると多忙かも知れませんので、おそらく司法書士の先生になるかと思いますが、あとはそちらと手続きを進めていただけますか? 先ほど申しましたとおり、わたくしどもとは別の、然るべき資格を有している人でないと手続きの代理は許されておりませんので。   
 供託するお金の300万円、それと司法書士さんの手続報酬の2万円、これは消費税を含めると2万1600円になると思いますが、それらはあらかじめご用意いただいたほうが事がスムースに運ぶと思います。田中様にとっては手続報酬が余計な出費になりますが、わたくしどももまた利息ぶんを諦めねばなりませんので、ここはひとつ、双方で我慢する・負担するということで、致し方ないところとご理解ください。   
   
 本日はわたくし、奥村がご案内させていただいたきました。   
 では、よろしくお願いいたします。」   
   
   
 プルルル・・・   
 「はじめまして、こちらは司法書士の○○と申しますが、田中様のお宅でしょうか?」   
   
   
 ・・・と、話の内容はややこしいが、相手の言わんとすることを理解しようと努めるほどに惑わされ、騙される可能性が高まりそうに思える。   
   
 日本年金機構を名乗っていなくても、特殊詐欺はありうると思えて仕方ない。もっといろいろな注意喚起が必要ではあるまいか。想定できる詐欺事例としては他のパターンもある。日本年金機構の「起きてしまった不始末」は、これは起きてしまった以上は「無かったことにできない」・・・しかし、そうであるならば、政府は、真剣に関連トラブル=詐欺事件などの防止に努めなくてはならない。   
   
   
 なお、上記の詐欺電話の例は架空のものであり、登場する人物の姓名などもまた架空の設定による。   
   
   
 マイナンバー制度で情報流出など起これば、やはり同様の問題が生じる(個人番号カードは本人確認資料のスタンダードとなるであろうし)。筆者は政府のやろうとすることにいちいち文句をつけたりしない性質(たち)なのであるが、しかし、マイナンバー制度に関してだけは不安を拭えないのである・・・管理・運営を、「やたらと心配性で、かつ尋常でないほどに完ぺき主義の人」の集団にゆだねるのであればともかく・・・そういう人、世の中にあまりいないのだよね、実際のところ。   
   

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クラシカルな某

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