2017-08

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イゾルデと「リング」・・・



   
 しばらくぶりの更新。   
   
 職掌の変更があって、心積もりしていた以上に多忙となってしまった。   
   
 貸してもらっていた映画DVDが何本かあって、すぐにはとても鑑賞しきれないながらも、しかし「トリスタンとイゾルデ」なるタイトルの作品だけは観た・・・ケビン・レイノルズ監督、2006年。   
   
 ワーグナーの楽劇とプロット・展開を異にする部分があまりに多い。「ワーグナー作品の映画ヴァージョンとも言える同一性・共通性」を求めるとその期待は裏切られる。DVDに収録されたメイキング映像にて説明されているとおり、トリスタンとイゾルデについて大胆かつ自由な発想のもとでストーリー再構築された悲恋物語ととらえて鑑賞するのが正解だろう。映画上のプロットの関係から闘争などのシーンも多い。   
 夫たるマルケ王に隠れてイゾルデがトリスタンと情交を結ぶとか、それがやがてバレてしまうとか、そういう点は同じである。   
   
 トリスタン、イゾルデふたりの情交シーンは、その気になればいくらでも濃厚に仕立てあげられるだろうが、これはかなり控え気味になっている。そういうものを強調したり、あるいは主題におく指向にはない。この映画のために作られたオリジナルの映画音楽にしたって、そこに官能性のようなものはいささかも無い・・・ただ、しかし、単独で聴いても楽しめそうな、素敵にしんみり・しっとりした風情の音楽である(作曲は Anne Dudley 女史)。   
   
 さて、この映画作品において、幼き日のトリスタンは父に連れられて狩猟を経験する。そこから帰ると、トリスタンは花輪を編んでそれを母に差し出す。母はそれを手にしてうれしそうな表情を浮かべる。何ということないシーンのようであるが、「花輪を編んでそれを愛する者に贈る行為」は、将来のトリスタンにとって大きな失態と悲劇の始まりにもなる・・・それはつまり・・・。   
   
 大いなる悲劇やドラマを経て、そしてすでに成長したトリスタンはイゾルデと出会って両者の間には愛が芽生えるが、しかしイゾルデはマルケ王のもとに嫁ぐことになる・・・そして、トリスタンとイゾルデのふたりは隠れて愛し合う。   
   
 或る日の逢引において、イゾルデはトリスタンに向かっておおむね次のようなことを言う:   
   
  「わたしたち、おおっぴらに手をつないで歩くとか、そういうことは出来っこないわよね。ふたりの愛の証となるような指輪(リング)だって無いし。有るといえば、またたく間に過ぎ去ってしまうような、密やかな逢引の時間だけなのね」   
   
 この言葉がトリスタンの頭に残ったからであろう、或る日のことトリスタンは、指輪ではないが、しかし即席で編んだ花輪(腕輪)をイゾルデにこっそりと渡した(市場を散策するマルケ王・イゾルデのカップルに声を掛けながら近づき、しかしマルケ王には気づかれぬようこっそりとイゾルデに渡した)。   
   
 が、しかし、その様子を目撃した者がいた・・・そして、やがてはふたりの密会もバレてしまい、そして・・・。   
   
 映画についてブログで取り上げる場合の、「これを書くとネタバレと言えるライン」の線引き・感覚が筆者には分からないので、ともかくあまり書くまい。   
 なお、上に書いたように2つの「花輪を渡すシーン」の映画中の対比効果について、監督そのほかがどこまで意図的に仕組んだかは分からない。しかし、筆者には、面白い皮肉であるように思えた。   
   
   
   
 男の目からすると、マルケ王役は十分に格好よく性格的にも難は無いと見え、これだったらイゾルデはさっさとトリスタンをフッて円満な家庭を築くことだけ考えればいいのになあ・・・などと思ったが、それでは「物語」にならんなあ。   
   
 イゾルデ役の女優も魅力的である。声もいい。が、トリスタンとの密会の折りに「わたしの前に何人の女を愛したの?」とか尋ねるのは、ちとイヤなものがあるというか不似合いなものがあると思えたが、セリフなのだから仕方ないか・・・どうせ後ろ指さされるような間柄なら、いっそのことさらに「わたしたちがこうして会うことの意味って何なの? ねえ、トリスタン! 夫(マルケ王)が愛してくれている以上にもっと愛して」とか何とか言って若く真っ直ぐなトリスタンの情をさらにかき立てたら面白かろうになあ・・・とも思ったが、これは余計なお世話か。   
   
   

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