2011-10

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雑記

   
 同じ経験をし、かつまた同じことを思った音楽ファンもいらっしゃると思うが・・・。   
   
 高校の英語の授業にて、 "corps" と "corpse" という2つの単語を示され、前者の発音は「コー」、後者のは「コープス」であり、これらの発音については入試問題に出たりするから覚えておくようにと教わった。で、これらの語の意味は前者が「軍団、部隊」などであり、後者が「死体」などである。   
   
 さて、学生時代はとうの昔のこととなり・・・。   
 社会に出て、上の知識は仕事上で役に立っているかというと、答えはノーだ。もしも自衛隊に入っていて米軍との合同演習に参加したりということになれば、ひょっとしたら前者の "corps" という語に出くわしたり、これを口にしたりする機会があるやも知れぬが。   
   
 さて、しかし、中学校や高校で教わる英語は役に立たないのかという議論になれば、筆者は「役に立つ」との立場をとりたい。ただ、「実際にこのような言い方をしたら相手に無礼で、時にはケンカを売るに等しいことになる」とか「ガキっぽく、あるいはバカっぽく思われてしまう」みたいな文章を叩き込まれていることもあるので、社会に出る前のどこかで、または社会に出てからの早い段階で、知識の補充や修正は必要になる。しかし、それでも、文法をはじめとする多くの基礎知識を授かるという意味で、学校における英語教育はちゃんとした、そして大きな意味を持っていると思うのだ。   
   
 再び "corps" と "corpse" について。   
 面白いのは、これら2つの単語はともに、語源をたどればラテン語の "corpus" (「身体」)に行き着くことだ。このラテン語が元になってまずフランス語の言葉が、時代を異にして2つ生まれ、それぞれがともに英語の世界に入った・・・こうして "corps" と "corpse" という、綴りも発音も異なり、おまけに意味まで異なる2つの英単語が存在するに至った。(なお、英語の "corpse" の元になった古いフランス語 "cors" が果たして現代フランス語のなかにも登場することがあるか否かは知らない。)   
   
 「アヴェ・ヴェルム・コルプス」(このコルプスがラテン語の "corpus" )などという音楽のタイトルや歌詞に接すると、こう思う:   
   
 「ああ、英語の "corps" や "corpse" を教わっても役には立っていないけど、コルプスという語にスッと接することが出来る/馴染みを感じるということは、これはこれで(趣味との関わりでは)意義あることを教わったよなあ」と。   
   
   
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 古代ギリシャ語には「フィロス」という語があったそうだが( "philos" )、この言葉は「愛好する」などの意味を持つ。   
 「哲学」を英語でフィロソフィというが、この語の成り立ちを古代ギリシャ語に求めれば「熟練を愛好する」、そして「学問を愛好する」ということになるようだ。   
   
 英語やドイツ語の「フィルハーモニック」、「フィルハーモニー」などなどの語は、「音楽愛好家」、「音楽協会」、そして「楽団」、あるいはそれらの形容詞形の意味を持っている。 "phil" の綴りが見られる場合には、全部が全部に当てはまるわけではないけれども、「愛好」・「愛」の意味があったりする。   
   
 米国のフィラデルフィアは「兄弟愛の市」を意味する(造語して命名された)。もしもフィラデルフィア管でなく「フィラデルフィア・フィルハーモニック」というオケがあったら、そこにはもう「愛」が満ち満ちていると言えよう。(←文末は評論家の某氏の真似)   
   
 オーディオファイル( "audiophile" )といえばこれは「オーディオ愛好家」である。この接尾辞の "phile" にはやはり「愛好する人」などの意味がある。   
   
 何かを愛好するのは結構なことと思うが、愛好家、マニア、ヲタクという言葉から普通にイメージするレベルをさらに超えてしまって、「ちょっとアレじゃない?」、「尋常ではないな、病的じゃない?」という程度になったとき、その状態を指すにあたっては "phile" でなく "philia" という接尾辞を使った言葉が生まれるのではないかなと思っている。   
   
 「聴く時間が無い」とか「聴こうにも、気乗りしない状態が続いている」などと分かっていながら次々とCDを買うのはビョーキなのだろうか?   
 人によっては「買い物依存症」の状態にあるかも知れない。しかし、未聴盤が山ほどで、チョモランマならぬミチョランマを築いている人の多くは、例えばこんなことを思って次々とCDを買い続けているのではないか:   
   
 1)「あ、この作曲家の名前、最近ときどき目にするなあ。そんなに魅力的な作品を書いているのかな。聴いてみたいな」   
 2)「(当然この曲は知っているけど)この人はどんな演奏をするだろう。聴きたいな」   
 3)「このセットでこんなに安いのか。これをゲットしないテは無いよな」   
 4)「これ、たくさんの人が買うだろうな。それなら俺も持っておきたい」   
 5)「こういうマイナー・レーベルのものはいずれ入手不可になるかもな。いま買っておこう」   
   
 かくて、ミチョランマはますます立派に成長を続けて・・・。しかし、上のような動機でCDを買うことがビョーキであるとは思えない。   
   
   
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 人間はどのように音楽と関わりを持ち、また向き合っているのか。世の中には、奇妙だったり、驚いてしまうようなケースがある・・・。   
 下の写真は、オリヴァー・サックス氏の本(氏は精神科医で多数の著書があり、日本にもファンは多いと思う)。   
 タイトルの "Musicophilia" はどう訳すのが適切か悩まぬではないが、邦訳本も出ていてそのタイトルには「音楽嗜好症」という言葉が用いられている(早川書房が出版)。だが、本書に含まれる数々の話題は、音楽を愛好するとか音楽にとりつかれるとかのケースに全然とどまらない。実に多岐にわたる、興味深い話ばかりだ。   
 この本の内容は・・・新聞に載った、邦訳本についての書評を参照していただくのが良いかな。グーグルにて「サックス」、「音楽嗜好症」、「日経新聞」の3語で検索すると同紙サイト中の該当ページがすぐに見つかる。
 本書は、日経新聞ばかりでなく、内外のたくさんの新聞・雑誌などで紹介されて来た。   
   


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クラシカルな某

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クラシック音楽好きです。